fine(終わり)

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「たぶん、子どもの頃、初めて会ったときから気になった。 初めて会ったとき、舞台袖から音葉の演奏見ていて、何で、そんなに楽しそうなんだろって、ピアノ弾くだけのことに、さっきまで、この子すっごく緊張してたくせ、なんで楽しそうなんだろうって、気になって。 それで、続けてたら僕もわかるかなって。 この子みたいに音楽楽しいって思えるようになるかなって。これが続ける理由になった。 「だけどさ、大学で再会して、一緒にいるようになって。 楽しかったよ、一緒にいること。 ただ、知ってるだろうけど、親のことで、昔から、環境に恵まれてるから上手なんだとか言われたり、親が先生だからって周りから期待されたり。 音葉も、悪気はないんだろうけど、好きな子にもそう思われるのも、言われるの結構、嫌だった。 だから、音葉に認めさせたかった。自力で、親とか関係なく、僕がやれることを。 だから、選考受けた。 認めて欲しかった。 音葉にだけは、親は関係なく、自分だけ見て、認めて欲しかった。 初めて会った時みたいに、僕そのものだけを凄いねって認めて欲しかった。 ああ、僕のやったこと、裏目に出てたんだ。ね。」 そう言うと、律はアイスコーヒーを一気に飲み干して、千円札をテーブルの伝票脇に置き、 「ごめん、先に行くね。」 そう言って、店を出て行った。
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