ふうふになれる日が来ないと諦めていたけれど、倒れた貴女の傍にいるために私は同性婚を可能にした。

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
エブリスタ 夫婦 私達は同性で、ふうふになれる日が来るとは思ってなかった。それでも、指輪は買ってつけてたし一緒に暮らしてた。だから、必死にのみこんでいた。男女なら結婚できたのになんてきっと同性を愛する人間の半分くらいは思うことを。けれど、愛する彼女が入院しても家族や親族ではないからと面会も説明も拒否された時ほどこの世に絶望した日は無い。その日から、どれだけの時が経っただろう。政治家になり、必死に同性婚が実現可能になるように努力した。中には、少子化に繋がるとかパートナーシップがあるとか理解してくれない人も多かった。少子化については、同性婚が可能になっても別に関係ないと思った。だって、男女どちらも愛せる人ならともかく、同性しか愛せず同性でなおかつ好きな人じゃないとキスすらできない人は結婚も子供もつくらないから、少子化に影響はないはずだ。もちろん、同性愛者を隠すため、親や周りの言いなりになり好きでもない人や異性と結婚していた同性愛者もいたかもしれないけど、それで減るのは少しだろうし、不幸せな人を減らせるならそれでいいと思う私は間違ってるのかと何度も自問自答した。それでも、罵声を浴びせられ、政治家なんかやめろと言われ続け、ボロボロになりながらもあの日の夢を叶えた日は、涙がとまらなかった。これで、彼女に何かあった時に病院で寄り添えると安堵した。そして、それからようやく迎えた結婚式の日に純白のドレスを着てもう42なのに恥ずかしいわと俯く彼女に何歳になっても綺麗よと頬にキスをした。 「もう、またあの日の写真を見てるの?」 恥ずかしそうに、近づいてきて写真を伏せようとする彼女の腕を掴んで抱き寄せる。 「当たり前よ。ふうふになってから、この写真を見るのが毎日の楽しみなの。この国では実現しないと言われていた同性婚。罵倒も同じ同性愛者からの応援も全て感情的で苦しくて、何度もふうふにこだわることをやめようとしたわ。でも、結局私は諦めずに、倒れなかった。貴女と結婚できるならどんな苦しみも受け入れられたの。狂ってるかしら?」 「ふふ、上手くいかなくて帰ってくるなりしゃがみこんで膝を抱えて頭を隠して悔しそうに泣く貴女を見る度に私は何度も抱きしめてそんなに辛い思いを貴女がする必要は無いと言ったけど、貴女は結局私が昔結婚できたらいいのになんて、ひどく残酷な言葉というなの夢を忘れずに叶えてくれたんだから、もし貴女が狂ってるのなら狂わせたのは私だから責任はとるわ」 指輪にキスをしてくる彼女だけど、結婚式から数年たち私はもう45歳で綺麗な指とは言えないし歳をとった手だから恥ずかしい。なのに、彼女は幻滅するどころか愛しそうに手を見つめてくるから、ふうふになるとこうした些細な時間すら特別にしてくれるのかしらなんて、ずっとほしくて彼女がほしがってた恋人の先、ふうふになれてよかったと心から思った。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!