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点灯式へのお誘い
前世の記憶を失ったままだったファウストも無事に全てを思い出し、晴れて将来の番となってもらえる事になった。ただ、ランバートはまだ高校生で受験生でもある。無事に大学に合格して卒業したら同棲を始める事になった。
これはそんな、付き合いたてのラブラブな頃のお話です。
11月も終わりに近づいたある日、夕方に珍しくスマホが鳴った。相手はファウストだ。
「もしもし? 珍しいね、通話なんて。何かあった?」
『いや、厄介な事は起こっていないが、お前のスケジュールを聞いて起きたくて』
「スケジュール? ちょっと待って」
通学用の鞄から使い込まれた手帳を取り出す。そこには細かく予定が書かれている。学校後に雑誌のインタビューや曲合わせ、ダンスレッスンに収録など。
今世のランバートはリッツと組んでアイドルをしている。全てはファウストに自分の姿を見せたいという事から始まったが、今ではファンも多くやり甲斐のある仕事と認識している。
が、流石に受験を控えた学生であるため、12月辺りから翌年3月まではスケジュールを緩めにしてもらっている。
「いつの予定?」
『11月20日、金曜日だ』
「えっと……空いてるよ」
『それなら、クリスマスツリーの点灯式に行かないか?』
「点灯式?」
それは毎年各所で行われているイベントであり、クリスマスを感じられる綺麗な催しだ。
だが去年までは何だかんだと予定が入っていたりしたし、一人で見に行くのも虚しいと思って足を向けていなかった。
でも今年は相手が……ファウストがいる。
前世でもこの位から建国祭の準備が始まり、街は華やかなオーナメントで飾られたが、電気は普及していなかった為ライトアップというものはなかった。
『東京駅のほうなんだが、イルミネーションとツリーの点灯式があるらしい。行ってみないか?』
「行く!」
それは思ってもみない誘いで、想像しただけで心が浮き立った。何より彼と再会してから久しぶりのデートだ。
更にツリーの点灯式なんて、ファウストにしてはロマンチックなものに誘われたのだ。絶対に行きたい。
やや食い気味に返事をしたからか、ファウストは電話越しに笑っている。
「……デート、だよね?」
『あぁ、そのつもりだ』
「仕事は大丈夫なのか?」
ファウストの職場は警視庁だ。事件なんかが起こったら駆けつけなければならないんじゃないか。
そんな心配をするランバートに、ファウストは穏やかな様子で笑った。
『幸い、俺は特殊犯罪対策課だ。そんな事件がそう簡単に起こってたまるか。絶対に早めに上がる』
「うん、そう……だよね」
そう言いつつも巻き込まれたランバートとしては、突然の出動もありそうな気がするのだが。
でも、ファウストが「絶対」というのだから信じよう。
『今世、初めて二人で過ごすクリスマスも楽しみだからな。今から気分を作っておくのもいいだろ?』
「! 流石に早すぎるだろ」
なんて笑うけれど、今からドキドキするのは仕方がない。
だって、楽しみなんだから。
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