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願った事
そのアニメが終わった時、映写機が置かれた机の上には二つの箱が乗っていた。
私たちは、それが何なのか知らないはずだった。きっときもだめしでこれを持ち帰らないといけない。そう思い込んで、手に取って、ポケットに入れた。
小さな箱の中からは乾いた音が聴こえる。
私は、中身を見てはいけないと思った。それを見つけちゃいけないと思った。
廃校を後にしてコテージへ戻った後も、そのアニメとおまじないと、箱のことだけは一度も触れなかった。
私は何も言わずに荷造りをした。隣ではあの子が荷造りをしている。
私は見た。
あの子があの箱をリュックの中に仕舞っているのを。
私は小さな箱を同じようにリュックの中へと仕舞った。
次の日、私たちはキャンプを終えて別々の街へと帰るだろう。
「また会えるよ」
そう約束をして、私たちは繋いだ手をほどいた。
何度も何度も願った。
あの子に会いたいと。
手紙だけのやり取りは続いた。その度に私は書く。あなたに会いたいと。
あの子も手紙の最後にはいつもこう締め括っていた。あなたに会いたい。会って話したいことがたくさんある。会いたい。会いたい。
私たちの願い事は叶わないままだった。
机の引き出しの中にはあの箱が眠っている。
眠っていたはずだった。だって、しっかり鍵をかけて隠していたのだから。会いたいという願い事と一緒に、仕舞っていたはずなんだから。
でも「大事なもの」は再び表舞台へと姿を表した。
古い小さな箱は蓋が開かれ、中身を露にしている。乾いた小さなそれが何か気づいた時、あのアニメを思い出したの。
そして、私は大事なものを隠そうと思いました。大事な、大事な、本当に大事なものです。
私はおまじないをします。
大事なお星さまを隠します。
願い事は決まっている。
「あの子に会いたい」
探さないでください。私たちの願い事を叶えてください。
お願いです。
探さないで。見つけないで。
私たちの願い事は、まだ、叶っていない。
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