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はあはあと肩で息をする僕を遠目で見ながら避けていく同じ学校の生徒を見送りながら、僕はどうにか気持ちを宥める。
帰宅後、父さんが帰ってきたら徹底的に話し合いをして撤回させてやる!!
「どうしたんだ伊織?また神城さんに虐められたのか?」
ぽんっと肩を掴まれ、思わずジト目を向ければ察したように曽根 誠くんは苦笑する。同級生の誠くんは幼稚舎からの付き合いで僕の良き理解者である友人だ。
湊斗とは誠くんは知人程度だが、僕と湊斗の関係も、僕が愚痴る分よく知っていて愚痴る度に僕を優しく慰めてくれる。
僕はうるうると涙が込み上げるのを感じながら、思わず誠くんに抱きついた。慣れた様子で誠くんは僕を抱きしめ返してよしよしと頭を撫でて慰めてくれる。
「もう僕と結婚してよ誠くんー!」
「は……?え?」
一気にざわつく周囲に誠くんが焦せるが、僕は気にする余裕もなくひしっと誠くんにしがみつくように強く抱きしめる。
じろじろと気遣いもなく好奇心を向ける周囲の視線など当然無視だ。
「待つんだ伊織!かなり誤解を招いてるから、とりあえず一旦でいいから離れてくれ!」
僕を押し返そうとする誠くんに離されまいと僕はさらに強く抱きつく。
「愛がなくてもいい!誠くんが誰を好きでも不倫でも契約結婚でもなんでもいいから僕と結婚しよう!」
「違う!!俺はお前にそんな最低なことは言ってもないしそもそもそんな関係じゃないだろ!話は聞くからまずは落ち着くんだ伊織!」
冷静になるんだと頭を軽く小突かれ、僕は渋々誠くんから離れる。すかさず2歩距離を取った誠くんは安堵したようにため息を吐く。僕を置いて走りださないのは優しい誠くんらしい。
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