第一話 選択

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 芹香のフォローは無意味だった。  誰も巻き込まずに俺だけが死んでも、誰がヒアブをサルベージする?  誰がヒアブに積んでいて、散らばった荷物を回収する?  無論、俺が走っていた山道も雪が溶ける春先まで通行止めだろう。  それでも、死んだからどうしようもない、仕方が無いから考えるなと姉貴から言われても………  俺の性格上、どうしても考えてしまう。  ………しかし俺はここで、姉貴の言葉の中に引っ掛かる節があった。  「なあ、姉ちゃん……  さっき、姉ちゃんは"元の世界には生き返れない"って言ったよな。  じゃあさ、"別の世界で生き返る"って事は可能なのか?」  俺の提案に、芹香は手をポンと叩いて納得した様子を見せる。  「ああ、その手があったね。  じゃあ、そうしよっか。  ……転生自体は簡単だけど、した後は楽じゃないよ?」
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