第一話 選択

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 車両全長十五メートル。  高さ最高三メートル。  空車重量十六トン。  フロント一軸、リア二軸の大型トラック。  417af15f-55b1-435e-a3e8-8285e5833fc5  荷台は通常のトラックと違い、厚さ百ミリのスウェーデン鋼で出来た箱形の架装。  運転席(キャビン)と架装の間に取り付けられた、人間の腕で云う肩と肘、手首が付いたクレーンの先に、人間の手のような鉤爪(グラップル)のアタッチメント。  それこそが、ヒアブ。  俺が誰にも譲れない、唯一無二のトラックだ。  俺の心意気に、芹香は意地悪い質問を投げ掛ける。  「もしも転生した世界線に、道路がなかったとしても?」  「道路は無くても、少なからず道はあるだろうさ。  俺はさっきの事故を教訓に、転生した後も猛吹雪が降ろうとも文句ないよ」  芹香もここで、俺に対して言い残す事は無かったようだ。  「それじゃあ、この後行った世界線でもし天寿を全うする時に、絶対に後悔することないようにね。  気をつけて………いってらっしゃい」  ………姉からの最初で最後の、"いってらっしゃい"。  湖から生暖かい風がそよぎ、俺は眼を瞑る。  今、姉の姿を見たら、もう一生これから見られないとなると涙が出そうでさ。  泣いてるところを姉貴に見られながら見送られるだなんて、ダサいじゃないか。  「お姉ちゃん、いってきます」  「ありがとう。私の事、はじめてお姉ちゃんって言ってくれて………」  これが姉貴との、最後のやり取りだった。  
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