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急に様子が変わったケイを、奇異に見つめ始める炭鉱夫たち。
黒い鉄の巨大な腕に手を当てて、ケイはこの正体の名を口にする。
「………ヒアブ。
全部思い出したぞ。
コイツの名前は、ヒアブだ」
彼がそう語りかけた瞬間。
その刹那、それは目映く輝き始める。
「うわぁ! 眩しい!」
「目が……!! 全員離れろ!」
皆が掌を透かし、離れていく。
その輝きは大人二人が両手を広げて並んだ幅から突如として手でつまめる程の大きさまで縮み、ケイの足元に転がった。
「俺……こんな世界に転生していたのか。
これ、俺が乗っていたヒアブの鍵じゃねえか……ていうか、ヒアブはどこ行ったんだ?」
姿を眩まし、突然姿を変えた鍵をケイは拾い上げる。
懸命に掘り起こしていた最中だった炭鉱夫達は、たった一つの小さな鍵へと化けたそれに呆気を取られて、諦めて帰ってしまった。
「あーあ、せっかく夜遅くに叩き起こされて来てみれば、あんなでっかい遺跡だと思ったらこれっぽっちの鍵一つの幻術にかけられてたのかよ」
「ギールさん家のぼっちゃん、そんな鍵捨てて帰った方がいいぞ?
どうせそんな物、放浪してる吟遊詩人が酒に酔って、その小さな鍵に幻術でもかけて遊んでたんだろ」
「ケイのあんちゃん、明日からノーツクの街に行っちまうんだろ?
明日の朝は早いんだろうから、もう寝た方がいいぞ」
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