第二話 新たなる世界

10/35
前へ
/106ページ
次へ
 炭鉱夫たちはスコップやピッケルを担ぎ上げ、そそくさと家路につく。  その場で両膝を突き、胸の前で鍵を握りしめるケイの頭を、ヒロイは二回ほど優しくぽんぽんと叩いて気遣う。  「まあ、こんな事もよくあるさぁ。  目の前まで追っていたお宝が眼を眩ましちまうこともよぉ。  良かったなぁ、昔の旅人が埋めた宝箱がミミックだったよりマシだろ」  ケイは鍵を握りしめたまま、その日はヒロイと共に炭鉱を後にした。  _ _………その後、家の自室のベッドで横たわるケイは一向に眠れず、左手を頭と枕に挟め、仰向けになって右手で鍵を見つめていた。  それと同時に、彼は前世で起きたことを全て思い出す。  「なんで忘れてたんだ……  あんな忘れもしないような出来事……  本当はあの時に死んでいなければ、もう十八年前にもなるのか。  あの日の事故から死んで、なぜか三途の川じゃなくて湖だったけど姉貴が居て……  もしこの世界に持っていくならヒアブって答えて……  今さらだよな。  だって俺、あの世界でもし生きてたら四十三歳じゃん。おっさんじゃん。  終わってんな……」  
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加