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彼は就寝前に今後の事を考えようと、ヒアブに鍵の姿になることを命じ、再び眠りについた。
_ _ _ ……翌朝。
父と母と共に食事を済ませ、暫くの間村を離れるケイは家を出ると、村人達が彼を見送ろうと大勢集まっていた。
勿論、ノーツクの街へ持っていく荷物の中に、鍵の姿になったヒアブもしまってある。
「ギールのぼっちゃん、寂しくなるな」
昨日、夜中に炭鉱へ来てくれた者。
「おにいちゃん行かないでー!」
「これで私たちの事思い出して」
近所付き合いも良かったケイは、休みの日に面倒を見て一緒に遊んだ村の子供達から家で焼いたクッキーや、花束を受け取る。
本来なら誰もが見送りを喜んで受け取り、名残惜しくも出発する筈だが………
ケイはどこか、表情が曇っていた。
「ケイ、緊張しているのかぁ?
なぁに、心配するこたぁ無ぇよ。
おらが若い頃も同じだったなぁ。
嫌になれば、帰って来りゃあいい。
父ちゃんは、いつでも待ってるぞ」
ケイの肩にドンと手を乗せて励ます、父ヒロイ。
「アンタ、そうやって昔の事を格好つけて言うけど、私をノーツクの実家の屋敷から連れ出して遊びたかっただけで結婚したんじゃないかい。
ケイ、辛かったらいつでもお手紙頂戴。
アンタなら、絶対上手くやれるわ!」
一方の母ユーカもヒロイに水を差しつつ、ケイに励ましを送った。
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