第二話 新たなる世界

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 それでもケイの曇った心境は変わることがなかった。  前世で鉄リサイクルの会社でヒアブの運転手として勤めていた頃の記憶が甦り、彼の懐には今、鍵としてスケールが縮尺されたヒアブがしまってある。  もう一度、ヒアブに乗りたい。  だが、ヒアブをどう使う?  どういった場面で乗る?  どうやってこの世界で、ヒアブを使えばいい?  葛藤を抱えつつ、ケイは村で手配された行商人が馬を操る貨物用の馬車の荷台に乗り込んだ。  乗り心地が劣悪な馬車に揺られる彼は、鍵の姿になったヒアブを握り、見つめ続ける。  彼の様子を目尻で眺めつつ、馬車を引く馬の手綱を握る行商人が口を開いた。  「若旦那。今朝、村の炭鉱夫から昨日の話、聞きましたぜ。  昨晩、古代遺跡を堀当てたら、その鍵に姿形を変えたんだって?  貧乏くじを引きましたなぁ。  しかし、薮蛇をつつく事にはならないといいですなぁ……」  行商人の言葉に、ケイは不安げな面持ちで言葉を返す。  「貧乏くじじゃねえよ。  コイツは、俺が願っていた再会なんだ。  またコイツに……ヒアブに乗ってやりたいんだがな。  ……どうしていいか分かんね」  鍵から視線を移し、馬車の堀の隙間から射し込む朝陽を見つめるケイ。  すると、突如として馬車が急に止まる。  その拍子にケイが転び、荷台の床に頭をぶつけてしまった。  「っ!! っ痛ぇなおっさん!!  馬の扱い方荒いんじゃねえのか!?  急に止まるなら止まるって言ってくれよ!!」  激昂するケイだった一方で、馬車を引いていた馬が取り乱し、落ち着かせるのに精一杯の行商人。  
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