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その後、ヒアブとケイは内定先に本来到着を約束していた夜まで、余った時間を歩き回る。
世界は違えど現実世界と食べ物や文化は一部共通しているようで、昼間はパスタ専門店でなけなしの小遣いを叩き、二人は鉄板ナポリタンに舌鼓を打つ。
「盛り付け、ちょー映えるじゃん。
やばー、めちゃうまーw」
「確かに美味いけど……お前が食べたいって言うから来たけどさ………
ここの店、値段高ぇんだよ……」
財布代わりの白い巾着袋に入った硬貨を数えるケイ。
対してヒアブは幸せそうな面持ちだった。
「人間って、こんな美味しいもの食べてたんだね。
ウチ、軽油しか飲んだ事ないからさ、人間の食べ物ってどんな味するか気になってたんだよね。
人間ってズルない?w」
「急にでかい声でメタい事言うなよ、お前が人間じゃないってバレるだろ」
「もうトラックの姿に戻りたくないw
人間の姿しか勝たんw このパスタ、マジ神w」
「俺の忠告が聞けないなら鍵の姿に戻って貰うぞ」
「………さーせん」
一見すると、二人は恋人同士でデートしているようにも見えなくはない。
しかし、ケイは人間。
ヒアブは機械。
機械が魔法の世界で喋っているのを目の当たりにしているケイは、彼女が人間の姿を手に入れた今、自分が今後どうすべきか頭を悩ませていた。
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