第三話 順応と苦悩

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 ケイが馬車工房に就職してから三日目。  ここはガストン馬車整備工場。  中肉中背の老体、望遠レンズが付いた片眼鏡をかける工房の主、サーズ·ガストンの怒号が工場に響く。  2c8d156e-c2f3-4de8-836f-1576f4dd53e1  「ケイ! 貴様、これはどういう事だ!」  ……時を遡る事、馬車工房に就職初日。  それはそれは、至って平和で平凡な一日だった。  ケイはヒアブを鍵の姿に戻し、昼間は新しく馬車を製作したり、客が持ち込んだ馬車の修理やメンテナンスを難なく行っていた。  しかし夜になり、工房の二階にある空き部屋を与えられたケイは夕食後、就寝前に鍵の姿になったヒアブから「鍵の姿まじだるぅー。人間の姿に戻らせて」と嘆く。  結局、工房主サーズに見つからないように、仕事終わりに自室であれば人間の姿に戻る事を許した。  しかし二日目になって異変が起きる。  調子に乗ったヒアブはケイと外出時の時にも人間の姿になっていた。  
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