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工房に戻ったガストンは半信半疑、ケイに話を聞いてみた。
「おい、ケイ………まさかお前、女連れ込んでるんじゃないだろうな」
馬車の車輪を留めるトルクレンチをガターンと落とすケイは、首関節に錆びた歯車を入れたのかと思わんばかり、ギクシャクした動きでガストンの方へ振り向く。
実に分かりやすい。
「ギクッ…………そんな事無いですよ」
「お前いま、ギクッって言ったよな。
冷や汗が凄いし、眼は泳いでるし……
職人の命の次に大事な工具を落とすとは……
お前の動揺の仕方はガキの絵本のように分かりやすい。図星だろ」
ガストンは堪えきれず、工房に二階へ上がる。
ケイに譲った部屋のドアを開けて確かめて見ても、誰も居ない。
うーん、と悩みながら階段を降りてくるガストン。
「ケイ、疑ってすまなかった。
そうだ、隣に住んでる婆さんからさっき、焼きたてのアップルパイを貰ったんだ。
しかも"三人分"だ。
ここいらで一段落つけて、午前中の休憩がてら食べようじゃねえか。
一個分余るだろうから、残しておいてくれ。
俺が昼のデザートで食べる」
涎を垂らして欲張るガストンは、ちなみに無類の甘党である。
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