第三話 順応と苦悩

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 工房に戻ったガストンは半信半疑、ケイに話を聞いてみた。  「おい、ケイ………まさかお前、女連れ込んでるんじゃないだろうな」  馬車の車輪を留めるトルクレンチをガターンと落とすケイは、首関節に錆びた歯車を入れたのかと思わんばかり、ギクシャクした動きでガストンの方へ振り向く。  実に分かりやすい。  「ギクッ…………そんな事無いですよ」  「お前いま、ギクッって言ったよな。  冷や汗が凄いし、眼は泳いでるし……  職人の命の次に大事な工具を落とすとは……  お前の動揺の仕方はガキの絵本のように分かりやすい。図星だろ」  ガストンは堪えきれず、工房に二階へ上がる。  ケイに譲った部屋のドアを開けて確かめて見ても、誰も居ない。  うーん、と悩みながら階段を降りてくるガストン。  「ケイ、疑ってすまなかった。  そうだ、隣に住んでる婆さんからさっき、焼きたてのアップルパイを貰ったんだ。  しかも"三人分"だ。  ここいらで一段落つけて、午前中の休憩がてら食べようじゃねえか。  一個分余るだろうから、残しておいてくれ。  俺が昼のデザートで食べる」  涎を垂らして欲張るガストンは、ちなみに無類の甘党である。  
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