第三話 順応と苦悩

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 彼の自室の扉がバーン!と音を発てて開く。  「ケイ! お前なにやってるんだ!」  ここまでがガストンの怒号が轟いた経緯である。  その後、ケイとヒアブが正座をさせられ、二人の目の前でガストンが仁王立ち。  案の定、大目玉を喰らった。  「貴様、修行の身で女を連れ込むとは何事だ!  俺は女子供が大嫌いなんだ!  下宿に女を連れ込んだ奴はお前が初めてだ!  もうお前の顔など二度と見たくない!  ここから今すぐ出ていけ!」  「誤解ですよ、おやっさん!  この子、俺の従妹で……!」  「見苦しい言い訳はするな!  ベッドで男女隣同士で座るなどと如何わしい!  清い職人の魂が籠る場に不浄を持ち込む事は許さん!  二度と来るな!」  ノーツクの馬車職人となって三日。  ガストン曰く、気力が保たず自ら逃げ出して三日で辞めた者は数多くいたが、直々にクビを言い渡したのはケイが初めてらしい。  
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