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両親は気を使っているのか、母は慌ててヒアブの分である朝食を配膳し、父も村の森で獲れた果物を絞ったジュースをグラスに注ぐ。
「ママさん、あざまるです」
「あざまる?」
流石にこの世界でギャル語は通用しにくいだろう。
母はヒアブの話す言葉に首を傾げ、ケイは徐に訳す。
「ああ、あざまるってのは、ありがとうございますって意味だよ!
コイツ、なんか訛りがひどいらしくてさ!」
異国の訛りなのか半信半疑な両親だったが、ヒアブはそんな両親二人やケイのお構い無しに律儀に「いただきます」と手を合わせ、テーブルに並べられた食事を摂り始めた。
ギール家が所有する畑で獲れた小麦粉を使って母が毎朝練りあげ、まだ微かに温かい焼きたてのパン。
平たい円柱形を六等分に切り、発酵により穴が空いた艶やかなチーズ。
こんがり焼けたベーコンの上に、半熟の目玉焼き。
タマネギをよく煮込んだ温かいスープ。
食卓に並べられた料理に、ヒアブは眼を輝かせながらパンを掴み、千切って一口。
「何これ、めっちゃ美味しい!
パンってウチ、生まれて初めて食べた!」
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