第三話 順応と苦悩

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 元はと云えば、ヒアブはトラック。  最近こいつは軽油以外で食べたことない人間の料理に衝撃を感じている。  転生して記憶を取り戻したケイよりも、ヒアブの方がこの世界を楽しんでいるようだ。  両親も素直な態度のヒアブを気に入り、嫁入り話まで囁くほどだった。  そんな中、ケイがついにノーツクの街で何があったのか、食らい表情で俯いて語った。  「実は俺、この子を工房の上にある宿舎に連れ込んだのをガストンの親方にバレてクビになって追い出されたんだ…」  それを聞いた母親、ユーカは右手に握っていたコーヒーカップを床に落とし、椅子に座ったまま失神。  父、ヒロイは食卓に突伏(つっぷ)して頭を抱え込み、大きく溜め息をついてしまった。  「ケイよ………  父ちゃん、おらぁなぁ……  おめぇが色気づいて、べっぴんさん家に連れて来るたぁ嬉しいことだぁよ?  んだけどなぁ、仕事放っぽりこかして女遊びしちまったらオラの若ぇ頃の失敗と二の舞だぁよ。  オラがガストンにもう一度話付けて来っからよぉ、もう一度チャンス貰わねぇか?」  当然、ケイも"自業自得だよな"と頭を抱え、ヒアブはギール一家のやり取りを眺めて苦笑いを浮かべていた。
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