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「俺にだってできる。いつかきっと、あいつに追いついて見せる」  テレビで流れている番組を見ながら、青年は呟いた。番組で特集されていた人物は、とある企業の若手経営者だった。  彼が創業した会社は、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長していた。経営者である彼自身に対する世の中の関心も高く、SNSのフォロワーは数百万を超えている。テレビやネットニュース、あらゆるメディアが彼を盛んに持ち上げ、称賛していた。  青年はそれが面白くなかった。  この若手実業家と青年は同世代。しかし、二人が生きているのは、まったく別の世界だった。青年は東京の外れにあるアパートで、一人暮らしをしている。築五十年以上の狭いワンルームは、もうすぐ秋も終わろうかというのに、窓から入る日差しが強かった。  実を言うと、青年も起業家だった。  より正確に言うなら、自称起業家と呼んだ方が、いいかも知れない。あるいは、起業家志望だろうか。自分でも認めたくないが、彼のビジネスは全くうまくいっていなかった。  最近はことあるごとに、己の才能の無さを嘆いている。  いま置かれている現実から自分の目標までは、果てしない距離があった。それでも、もし自分を正しく導いてくれるメンターのような存在がいたら、救いはあるのに。青年はいつもそんなことを考えていた。  彼は出口のないトンネルでさまよっている現状から、一日も早く抜け出したかった。 「俺にだってできる。いつか、きっと……」
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