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 当然のことながら、簡単に儲けられて、売り上げが確実に伸びるビジネスを探すことは容易ではない。そのようなビジネスは世の中には多くないし、仮にあったとしても、他の誰かがすでに始めている可能性が高い。  しかし青年は、まだ誰も思いついておらず、誰もやっていないビジネスが、一つくらいはあるんじゃないかと思っていた。  彼のこのところの日課は、朝起きるとすぐに机に向かい、次の事業のアイデアを考えることだった。  覚醒したばかりのフレッシュな脳で行うブレインストーミング。これが今まで誰も考えたことのないビジネスアイデアを生み出してくれる。  実はこれも「起業セミナー」の講師の教えだったが、青年は真に受けていた。要するに彼は、根が素直で、信じやすい性格だった。  今日までの一ヶ月間、彼は一日も休まずにビジネスアイデアをノートに書き続けてきた。書き出したアイデアの数は、百個は下らない。  ただ、それらのほとんどは、すでに競合がいるか、競合がいなくても、需要がきわめて少ないと予想されるものだった。 「アイデアを考えるのがこんなに難しいとは思わなかった。こんなことなら、会社員時代に、ちゃんとしたビジネスの構想を立てておくべきだった……」  青年は毎日こう嘆いていた。何も進展がないまま、焦燥感が募る。現実逃避の手段は、ネットサーフィンだった。  以前はこういうときも、漠然とネットサーフィンをしていることはなかった。起業に役に立つ情報がないか、ネット中をくまなく探していた。しかし今は違う。何の目的もなく、SNSとネットニュースを追うだけの、非生産的な時間が過ぎてゆくばかりだった。
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