1人が本棚に入れています
本棚に追加
空は快晴だった。目の前には、美しいマリンブルーの海が広がっている。ここは南半球にある小さな孤島。男は二ヶ月に一度、家族と共にこの島を訪れ、英気を養っていた。
今日はこのあと、日本にいる不動産業者とのテレビ会議が予定されている。それまではビーチでカクテルでも飲みながら、のんびりしようと考えていた。
しかし、こうしている間にも、自然と仕事のことが頭をよぎるのが男の性分だった。妻と幼い子供が砂浜で遊ぶ様子を横目に見ながら、男は透き通った海と無限の空に鋭い視線を向け、新たなビジネスの構想を練っていた。
「うれしそうな顔をしているけど、何かいいことでもあったの?」
妻がこちらにやってきてたずねたが、男はそっけなく言った。
「いや、別に」
「嘘よ。いつもは難しい顔をしているのに、先週の東京への出張から帰ってきてから、一人でほくそえんでいることが多いわ。商談が上手くまとまったんじゃないの?」
「商談……。まあ、そうだね。うまくいったよ」
やれやれ、女性は本当に細かいところを見ているものだ。彼は呆れながら適当に相槌を打つと、先週の青年とのやりとりを頭の中で振り返った。
青年は見事に自分の罠に引っかかった。彼が自分を疑い、この案件が失敗することも多少は想定していたものの、作戦は予定通りに成功した。いや、大成功と言っていい。
これでまた、長期間にわたって苦労することなく財産を増やすことが可能となる。男は満足げに笑みを浮かべた。
「パパ、どうしたの?」
最初のコメントを投稿しよう!