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それ以来、彼はネット上のあらゆる広告や勧誘を無視していた。どんな情報商材にも、心を惹かれることはなかった。いま目の前に表示されているネット広告も、黙殺できるはずだった。しかし、なぜか彼はそうしなかった。
青年は吸い寄せられるように、広告をクリックした。ページが切り替わり、怪しげなウェブサイトが表示された。
この手のサイトにしては、えらく簡素な作りだった。通常はド派手なデザインと大袈裟な宣伝文句がセットになっている。ここはそうではなかった。シンプルすぎて、拍子抜けするほどだった。
青年はサイトに書かれている文章を一言一句、すみずみまで読んだ。そして、サイトの指示に従い、自分のメールアドレスを登録した。
怪しげなウェブサイトでそんなことをしたら、未来永劫、大量のスパムメールと勧誘メールが来るかも知れないというのに、青年にはまったく躊躇がなかった。
しかも登録したメールアドレスは、彼が複数持っているメールアドレスの中で、最も重要なものだった。仕事用の連絡にも使っている。
我に返ったのは数分後、牛丼屋のカウンター席だった。定食を食べながら、青年は自分のとった行動を後悔した。
冷静に考えれば、見知らぬウェブサイトにむやみにメールアドレスを登録することは、良識ある現代人にとって、はばかられる行為である。だが、彼にも言い分はあった。
起業コンサルティングを謳っている今回のウェブサイトは、今まで彼が散々見てきた同じような怪しいサイトとは、二つの点で違いがあった。
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