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名前は伏せられているが、仮に有名な起業家であれば、そのような起業家に指導してもらいたい人間は山ほどいるはずなので、わざわざネットで募集する理由がわからない。
考えれば考えるほど怪しいと、青年には思えてきた。
それでも……。もし、本当に指導を受けられるなら、願ったり叶ったりだ。自分には、導いてくれる本物の起業家が必要。彼は以前からそう考えていた。
青年は、自分の直感に賭けてみることにした。もしこれが詐欺みたいなものなら、自分の判断能力には大きな問題があると言えるし、そうであれば起業なんかあきらめて、サラリーマンに戻った方がよい。新たなビジネスを始めても、どうせ先は見えている。彼はこう考えた。
数時間後、コンサルタントと思われるアカウントから、メールが届いた。
メールには、経歴書を送るように指示があった。書類審査を兼ねているらしい。青年はすぐに経歴書を添付して返信した。
翌日、書類審査に合格したと伝えるメールが送られてきた。あっさり合格してしまったので、青年はますます怪しいと思うようになった。もしかしたら、本当に詐欺なのかもしれない。
コンサルティングを受けるには、さらに数日後に行われる面接試験に合格する必要がある。青年は行かない方がよい気もしていた。一方で、これが起業家としての自分のラストチャンスであり、「最終試験」ではないかとも感じていた。
起業をあきらめた先の人生を考えるのは苦痛だった。会社員に戻るとしても、就職先を見つけるのは至難の業にちがいない。起業を中途半端で投げ出した人間を、欲しいと思う会社があるだろうか。
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