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腰が抜けた風子は
その場に座り込んでしまっていた。
何も聞こえない・・
暗闇に放置されたような絶望の中で
立つことさえもどうでもよくなっていた。
トントン
「お嬢さん」
さっきのおじさんの声がする。
風子はうらめしそうに顔を上げた。
おじさんはカロリーオフの缶コーヒーを差し出すと
「元気だしなよ」
と、風子の手に握らせて事務所に戻って行った。
風子は長いため息を吐き出しながら
プルトップを開けると一口飲んだ。
「はぁ・・美味しい」
と
「美味しいの?」
甘く優しい声がする。
「え?」
そこにはタンクトップに短パン・・
見慣れない男の人・・
見慣れないけど見慣れてる・・
「・・・こう・・た?」
風子を見つめるはちみつみたいな笑顔が胸をうつ。
「風子ってば・・思い切ったな・・」
愛おしそうに風子の散切りの髪を撫でる光汰もまた丸刈りだった。
風子は散切りの髪を恥ずかしそうに撫で付けながらうつむいた・・
「今日の風子はパステルカラーのコットンキャンディだね」
はちみつのようにとろける笑顔で風子の顔をのぞいた。
「会いたかった」
そう言うと深く優しく風子を抱きしめた・・。
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