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振られた。クリスマスまでひと月を切ったこのタイミングで。
彼とは大学時代から付き合っていた。このまま順調にいけば結婚するだろうと、ほぼ確定した未来を思い描いていたのに。
しかも、まさかの二股発覚。彼はわたしじゃない女を選んだ。
あんまり悔しくて悲しくて情けなくて、別れ話をしていた店で周りの目も気にせずに、わたしは彼の顔を殴った。平手で、だったけど。これまでの数年間はなんだったんだ。貴重な時間はもう取り戻せない。そう考えたら、これくらい可愛いものだと思った。
彼はわたしに殴られた頬を押さえながら、唇を噛んでうな垂れていた。
ごめん……。
聞きたくなかったその言葉に、わたしはギュッと目を閉じる。再び目を開けると、彼との決別を誓うかのようにその言葉を口にした。
さよなら。
わたしはつかつかと大股歩きで店を出た。
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