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ひとしきり静かに泣くと、わたしは涙と共に彼との思い出を振り払うように、ぱちぱちと何度か瞬きを繰り返した。 そうしたら。 クリアになった視界に、不思議なものが飛び込んできた。 何?人形? イルミネーションで飾られたケヤキの木の枝、相当高い位置に人の姿らしきものを発見したのだ。 時折目を瞬かせながらじいっと見つめていたら、それが動いた。 えっ……。 びっくりしてさらに目を凝らしたら、枝の上に座ってぶらぶらと足を揺らしている人の姿が見えた。 本物の人間?まさか何かの作業中とか?あんな高い所に一人で? 涙なんか、もうとっくに引っこんでしまっている。 その正体が気になって気になって仕方がない。 一体どうしてあんな場所に? ぐるぐると答えを探しながら、なおも見つめ続けていたら、どうやら相手も私に気がついたらしい。その体勢から、明らかにこちらを見下ろしていると分かった。 まずい……。 咄嗟に顔をそむけて、わたしはこの場から立ち去ろうと思った。 が。 すぐそばで声がした。 「僕のこと、見えるんだねぇ」 「えっ」 驚きすぎて、わたしは手にしていたジェラートを危うく落っことしそうになった。
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