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不思議な出来事だった――。 わたしはまだ手の中にあったコーンをかじりながら、ベンチにもう一度座り直した。通り一帯に飾り付けられたイルミネーションを眺めながら、まるで謎解きのように天使が残していった最後の言葉について考えた。 「そんなの、この時期だし、どこにでもありそうだけど……」 商店街、デパート、イベント広場、とか? 考えつく場所がありすぎて、どこに行けば見られるのか、かえって思いつかない。 「とりあえず探してみるか。どうせ予定もないし」 わたしは立ち上がると、イルミネーションの光の中を、今度はゆっくりとした足取りで歩き始めた。 それから数十分後。 わたしはアーケード街から少し逸れた所にある、某有名店の前で足を止めた。 「これなんか、まさにそうじゃない?」 それは、あの天使が言っていた条件にぴったり当てはまりそうな、大きくて白いクリスマスツリーだった。 「きれい……」 うっとりと見上げながら、ほおっとため息をついた。 これまでだったら隣には彼がいたものを――。 ふと思い出して、ツリーがまとうイルミネーションがにじみそうになった。 その時わたしに声をかける人がいて、涙が止まる。 怪訝に思いながら振り向くと、そこには高校時代のクラスメイトが立っていた。
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