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仲が良かったその男子は、数年たった今では爽やかな青年に変貌していて、振られたばかりだというのに、わたしはどきっとしてしまった。
「すごい偶然だなぁ」
彼はにこにこしながら私に近づいてきた。
つられてわたしも笑顔になりながら、言葉を返す。
「本当だねぇ。もしかして、ここで彼女と待ち合わせ?」
「彼女なんていないよ」
さらっと言って、彼はあははっと笑った。
「実はこのツリー、うちの会社で用意したやつでさ。見に来たんだ」
「へぇ、そうなんだ。こんなに大きいの、この辺で見たの初めてだよ」
「クリスマスツリーっていったらさ、俺たちが高校生の頃は緑色のやつしかなかったと思わない?」
「ん~、どうだったっけ……」
十年近く前のことだ。そう言われればそんな気もするが、あんまり覚えていない。
「ところでそっちは?誰かと待ち合わせ?」
わたしは首を振った。
「うぅん、帰る途中」
そう答えたら、彼はニカッと笑った。
「じゃあさ。久々に会ったことだし、一杯どう?」
「今から?」
「都合いいなら、だけど」
わたしは少しだけ考え込んだが、彼の誘いに乗ることにした。このまま家に帰って一人酒に逃げるより、全然いい。
「うん、いいよ」
わたしの返事に、彼は嬉しそうに笑った。
「どこ行く?」
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