残機、あといくつ。

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娘の私にとっても、母はよく分からない人 だった。 日がな寝てばかりで家事も仕事もしない母の 世話を買って出るのは、いつも祖父母か私の役目であった。 父は家庭を省みない母に愛想を尽かし、私の物心がつく前に荷物をまとめてある日の夜、この家を出て行った。それ以来、一度として顔を見た日は無い。 母が「喉が渇いた」と言えば水を、「お腹が空いた」と言えば祖母の作った料理を母の寝室にある ベッドサイドへ運んだ。彼女の指示する事に、 誰一人として異を唱えなかった。 母は私が言い付けを破る度に、厳しい叱責を した。 「外の世界は、危険で溢れているのよ。お願い だから、お家でじっとしてて頂戴。」
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