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 それを知ってから、俺はますます不安になり、そのせいか、俺の周りで不自然なことが起こるようになった。突然コップが割れたり、時計が変な動きをしたり。マンションの側を歩いていると上から植木鉢が落ちてきたり、信号が青なのに車に轢かれそうになったり。これはあの女の呪いなのか。それとも気のせいなのか。俺は自分が精神的におかしくなり始めているように感じた。  そんな俺のことを、恋人は心配し、話を聞いてくれた。恋人には心配をかけまいとずっと黙っているつもりだったけれど、耐えきれず、俺はあの女のことを恋人に話した。きっとあの女の霊が俺を苦しめているのだと。情けないと思いながらも、俺は恋人に助けを求めた。すると彼女は、その人のことを話してほしいといった。あの女が俺を恨む原因が分かれば、何か解決するかもしれないというのだ。だから俺は、あの女のことを色々話した。そしてその結果、俺はますます苦しくなった。あの女のことを色々と思い出してしまったからだ。そう、あの女が俺を苦しめたことだけでなく、俺があの女を苦しめていたということまでも。  恨まれて当然なのだと俺は思った。そしてそれから俺は家に引きこもるようになった。家の中でも不自然なことは起こり続けていたけれど、家の外にいるよりは安全だと思ったからだ。それなのに。  その夜、声が聞こえたのだ。あの女の声が。それは、俺のことを恨む声だった。  ごめんなさい。ごめんなさい。  俺は思わずつぶやいていた。あの時は、あの女にも悪い所があるのだからと、あの女を苦しめることに罪悪感なんて感じなかった。けれど、今は罪悪感でいっぱいになっている。苦しい。息がしにくい。  好きだったのに。  そんな声が側で聞こえて、付き合い始めた最初の頃、あの女が、彼女が、幸せそうな顔をしていたのを思い出す。そして、俺も幸せだった。俺も好きだったのに、と俺はいつの間にか答えていた。じゃぁ一緒になろうよ、と言われ、俺は頷いた。
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