マキの告白

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マキの告白

 アキラに問い詰められて、マキはため息をついた。 「だって、もう55歳なのよ。少し位楽をしてもいいと思って。」 「は?」 「あなた、娘たちの事もあんまり見ていなかったもんねぇ。」 「え?」 「娘たちは二人共魔女の系譜を受け継いで魔法学校を卒業したって言うのに。」 「だって、授業参観とか、普通にあったよね。魔法学校って全寮制では?  いやいや、そもそも魔女の系譜って何?」 「あら、いやだ。本当に気づいていなかったの?そりゃぁ、できるだけ、人間族の奥様に近づけるように色々家事もやっていたけどね。  元々私って丈夫じゃないし、そろそろ家事も魔法でしようと思って。  奥様は魔女って昔からやっているじゃないの。  娘たちだって、そのうち誰かの奥様になるんだから魔女の修行は必要でしょ?  娘たちの学校も、一応人間族にも合わせて、それなりに工夫していたのよ。 その日は魔法を使っちゃいけないとかね。  それに、今時全寮制って。あなた、ハリーポッターの見過ぎよぉ。」  そういうと、マキはけらけらと笑った。 「え?じゃ?世の中の奥様は?」 「ほとんどが魔女。よ。運悪く魔女になれなかった奥様を除けばね。そうじゃなかったら、誰がこんなワンオペで家事全般ができると思っているの?」 「魔女になれなかった奥様のお家には今は、男性の育休も進んでいるからしっかり手伝っている筈よ。」 「え?じゃ、手伝っていない旦那の奥様は?」 「だから、魔女!  さ、もうばらしちゃったし、家事も魔法でいいわよね。でも、あなたは運が良いのよ。私は魔法薬が得意だから、人間の病気も美味しい魔法薬で治してあげたでしょ?  一度ママの魔法薬のんだ時に苦かったでしょう?ママは魔法薬が苦手なのよ。」 「あ、まぁ、確かに医者にかかったことないね。」 「でっしょう?うふふ。あ~気が楽になった。あなたはいつまでも気が付かないし、自分から人間の旦那様に魔女ってバラしちゃいけないって規則があるからね。気付いてくれるまで言えなかったのよ。  あ、今日くらいの魔法はずっと使っていたわよ。  あなたがリモートワークになって家にいる時間が長くなったからようやく気付いてくれて、よかった。」 ・・・・というわけで。  俺の奥様は魔女だった。  でも、俺はこれまでの25年間に満足しているし、魔女だからって今更マキに事を嫌いになれるはずもない。だって、すでに魔法の恩恵を受けてずっと暮らしていたんだから。  マキによれば魔女と結婚した場合、大抵結婚5~10年位でばれるそうだ。俺は大抵の人間より仕事ができると思っていたが、人間を見る目においては劣っていたらしい。  いや、人間ではなくて、魔女だけど。  人間の女性だったら、マキのように一人で家事を背負ったら大抵倒れるかうつ病になるらしいから。夫ももっと手伝わなければいけないのだそうだ。    まぁ、いいさ。この先家の中で何かが勝手に動いていても魔法だってわかったんだから。  もう悩まなくていいし、もっと、早く聞けばよかったと思っている。  そのおかげで俺も楽をさせてもらっている。  人間の女性と結婚した皆さんはちゃんと手伝ってあげてほしいものだ。  そういうことだから、あんたの家の奥様もきっと、魔女なのかもしれない。  だって、家事も育児も女性と言うだけであんなに沢山こなせるわけがないんだから。 【了】
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