夫が考えるに

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夫が考えるに

 俺は佐藤 アキラ。妻はマキ。  俺たちはそれぞれ違う大学を卒業後に今俺の勤めている会社に外注できていたマキに出会い、何となく気が合って結婚した。  もう結婚25年になる。  たまたま同じ年齢だったので30歳を機に結婚して双子の子供がいる。  子供達ももう社会人になり、俺たちは55歳になった。    俺ももうじき会社を定年になる。  そんなに長く添い遂げてきて今更だが、最近になって、俺はマキは実は魔女なんじゃないかと考える事がある。  マキは元々身体があまり丈夫ではないそうで、子供ができたときに、マキのご両親から会社を辞めて専業主婦にさせてはくれないかと頼まれた。  俺の会社は結構給料もいい方だったので、特段、俺には異論はなかった。  マキは自分で産婦人科を見つけてきて、そこで産みたいと言った。  それも、出産するのはマキなので、マキの好きな所で出産すればよいと思っていた。  俺は立ち合い出産を望んだが、病院の方針で、生まれてすぐに会う事はできるが、立ち合い出産はしていないと断られてしまった。  子供は二人ともその病院で産まれ、言われた通り、出産直後に会わせてもらえたので特に不満もなかった。  二人共可愛い女の子だった。  マキは丈夫ではないと言いつつも、無事に出産を終え、普通に1週間ほどで退院した。  産後はマキのお母さんが手伝いに来てくれていたし、俺はいつも通り会社に行くことができた。  一度、体調が悪くて早退したときに、きっと熱のせいで見たのではないかと思うような光景を見たことがある。    マキはベッドで休んでいた。  双子が一遍に泣きだしたが、お義母さんは慌てることなく手に持った杖のようなものをヒョイっと動かすとほ乳瓶が二本フワフワと浮いて、ミルクは勝手にスプーンが動いて擦りきりでミルクをはかり2本の哺乳瓶に入れ、ウォーターサーバーでお湯を入れ、瓶が勝手に震え、粉ミルクを溶かした後、お義母さんは哺乳瓶を空中でうけとり、人肌まで冷ましていた。  俺が見ているのに気が付いて一瞬ハッとしたようだが、 「あら?どうなさったの?こんなに早く。具合でも悪い?」  と、声をかけられ、ベッドに寝かしつけられた。    夕食の時に目が覚めたマキにそのことを話すと、 「まぁ、いやぁね。あなた熱で幻でも見たんじゃないの?」  と、笑われた。  マキは市販の薬が嫌いで、いつも何やら綺麗な色の瓶から液体の薬を出してくれる。子供達も何か具合が悪くなるとマキのだす液体の薬を飲んでそれで治っている。  その日の俺の薬はお母さんが出してくれたが、マキの出してくれる薬より苦かった。『苦っ』と言った俺にお義母さんは、 「あら、マキはいつも甘やかしているのね。お薬は苦い方が聞くんですよ。」  と、笑って言っていたが、その薬も市販薬ではなかった。 「ママはお薬ちょっと苦手だもんね。」  と、意味不明の言葉を言いつつマキとお義母さんは顔を見合わせて笑った。  ここ最近、年のせいか部屋の中で不思議なことを多く見かけるのだ。  洗濯物がフワフワ浮いて一人で勝手に畳まれていたり、マキが料理中だと思いキッチンに行ってみたら鍋にお玉が入ってひとりでに鍋を焦がさないように混ぜていたりした。  俺は意を決してマキを問い詰めることにした。  
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