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ラープサーの言葉にどれほど傷付いたのかを淡々と語るアドラーの額に口付け、そっと額と額を重ねると、お前にだけは分かって欲しかったと本音を零されて小さく頷く。
「うん。悪かった。許してくれ」
「皆、見た目が良いと言って欲しがる」
誰も俺の心などどうでも良いと思っていると顔を背けて自嘲すると、優しい手が額にかかる銀糸を掻き上げ、そんな事は無いと同じく優しい言葉がキスとともに落とされる。
「そんなことはないよ、うん。他の誰かのことは知らないけれど、私はそうじゃないよ」
だから信じてくれという男の顔を見るために正面を向いたアドラーは、そこに己が想像した以上に優しく強い表情の恋人を見いだし、感情を堪えるように眉を寄せる。
「お前の心はいつも私が抱いている」
「……ッ……・!」
「これから先、また殿下が来ることがあれば、何かと理由を付けて私のところに来れば良い」
彼に抱かれて熱を上げられたままでも良いから来いと言われて小さく頷くと、そっとそっと唇が重ねられる。
「殿下は心までは抱いていないだろう?」
「……名前をいつか呼んでくれと言われたけど……ハンスに呼んでもらえと言ってやった」
それが俺のあの人に対するささやかな抵抗だと笑うとそれを褒めるように再度口づけられ、アドラーの腕がラープサーのうなじの上で交差する。
「そうか……。そんなお前を私が抱いている。だからもう独りで苦しむな」
「カレル……」
だからもう、何故生まれたのかなどと言わないでくれと強く囁かれて黙って頷いたアドラーは、仕事で寝た時とは全く違う顔をしながらラープサーとキスをし、抱いていると言われた心だけではなく身体もその言葉通りにしてくれと身を委ねるのだった。
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