嫉妬

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「……カレ、ル……ッ……・」  貴人に名を呼べと言われても抵抗したアドラーだが、今己を抱いているのがあの時ずっと呼ぶことを堪えていた恋人だと快感に霞む脳味噌が理解すると、堪える事が出来なくなったように何度も名を呼ぶ。  その度に声やキスで返事をされ安堵したアドラーだったが、いくつかの歯形が残る腕を掴まれ、そこに労るようにキスをされて熱い息を吐く。 「……名誉の負傷だね」  腕の歯形が意味するところを理解し負傷したアドラーを褒め称える為に何度も何度もキスをしたラープサーは、アドラーが肩越しに振り返ったため、今度は薄く開く唇にキスをする。 「もう新たな歯形をつけなくて良い」  己の身体を傷付けてでも私を守らなくてもいいと囁き、どんな思いからかシーツに顔を押しつけるアドラーだったが、その口から強請る言葉が流れ出してラープサーが一瞬動きを止める。 「……もっと……・」 「ああ」  もっとと強請られ頷いたラープサーがキスをしながら足を抱え上げると、後ろに伸ばされた手がラープサーの栗色の髪に添えられたため、その手に誘われるように身体を密着させる。
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