銀の翼 金の枝

嫉妬

　一日の仕事を終えて友や仲間と疲れを労う為に酒屋に来る男達の中、四種類の髪色と瞳の色を持つ男達が一つのテーブルを囲んでいた。
　四人の前にはチーズや乾し肉、鱈の切り身と当然ながらの葡萄酒の小さな樽が並んでいたが、赤毛の男は主に葡萄酒を飲み、銀糸を無造作に束ねた男は鱈の切り身を食べていた。
　ただ、栗色の髪の、二人に比べれば年齢が少し年上に見えるが年下にも見える男は、二人の視線を一身に浴びながら肩身の狭い思いをチーズとともに飲み下していた。
「……え、と、ベリエス、その鱈の切り身を食べたいんだけど、構わないかな」
「食べれば良いじゃねぇか。ベリエス、何をそんなに不機嫌になってんだ？」
　残る黒髪の男が盛大に驚いて銀髪の友人の横顔を見れば、不機嫌じゃないが先日のカールの発言が気にくわないとそっぽを向いたため、赤毛のマイヤーをも盛大に驚かせてしまう。
「いや、だから、うん、それについては謝ったじゃないか。きみも許してくれるって言ったと思うんだけど……」
　違っただろうか私の勘違いだろうかと消え入りそうな声で確認をするラープサーをじろりと睨んだアドラーは、何を言われたんだと隣の席のケンプに突かれて溜息を零す。
「俺が殿下のお相手で苦労しているのを知っている癖に、可愛がられているだのお気に入りだのと言うから腹が立つ」
「いやいや、そうじゃなくて、うん、いや……」
「何を言っても言い訳にしか聞こえないから止めておけばどうですか」