嫉妬

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 そもそも、アルブレヒトがここに来るのはお前に会いたいがためだろうと苦笑するアドラーにマイヤーも同じ顔で頷き、ラープサーにも一つ頷いてとにかく大変だったがあなたたちが別れなくて良かったと目を伏せる。 「アルのせいで別れたとなれば……ヴェンツェル様に呪われそうだ」  それだけは何があっても避けたい、ヴェンツェル-ベリエスの兄-に天堂から呪われたくないと本音を訥々と語るマイヤーに気にするなと告げたアドラーは、マイヤーの情人-つまりはアルブレヒト殿下-にはこれからも今まで通り付き合うつもりだが、可能ならば彼が来ている時の予定を俺だけではなくカールにも教えてくれと告げつつ菫色の瞳を見れば驚きにその目が丸められる。 「構いませんが、カールはそれで良いのですか?」 「……少しでもベリエスの負担を減らすことが出来るのならと思ってね、うん」  ラープサーの頼りなげな言葉が与える力はアドラーにとっては限りなく強いもので、休暇の間中、まるで発情期を迎えた獣か何かのようにずっと抱き合い-離れたのは自然現象の時ぐらい-、隣で眠っているのを確かめるとつい相手を起こしてまでも抱き合っていたのだ。  その最中に幾度も幾度も交わされたのは、互いの心を抱いている証の言葉と二人だけが呼べる名で、二人の絆をさらに深める為のキスだった。
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