嫉妬

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「お休み、カール」 「ああ、うん。ハンスもお休み」  休暇も終わりまた明日からは親衛隊の副長という重責を担わなければならず、またラープサーは地質調査に出向く事になっているために互いの仕事に全力投球することを伝えると、本国にいないからか比較的時間に余裕のあるマイヤーが頬杖をつきながら二人に手を振る。 「調査から帰って来たら教えて下さい。殿下が土産に持って来てくれた大陸産のお茶を飲みましょう」 「それは楽しみだな」  酒場の主人に手を上げて合図を送るアドラーの後ろにひょこひょことついていくラープサーは、酒場の入口でもう一度振り返り、笑顔で見送ってくれる友人に会釈を残してアドラーが開けてくれている扉を潜るのだった。    その後も大国の皇弟という身分のアルブレヒトが他国に出向くにしては短期間のうちに海を渡って情人のマイヤーの元を訪れ、その度にアドラーが今まで通りの方法で彼をもてなしていたが、以前とは違ってアルブレヒトがマイヤーが借り上げている家で寝泊まりをすることが多くなった為、そんな時は何を遠慮することも無くラープサーの家に転がり込み、心身に蓄積していく上手く吐き出すことの出来ない熱と感情をラープサーの手と温もりを借りて昇華するのだった。
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