70人が本棚に入れています
本棚に追加
正直、胃袋はかなりきつい。
かといって、ここで断るはずもない。
僕には、なんとしてでもすべてを平らげる自信があった。
いや、自信……とは少し違う。
切望、だ。
彼女のすべてを僕のものにしたい、という切なる願い。
「はい! 全然、大丈夫です!」
スピーカーの向こうで、教授がクスリと笑った。
『最後の料理は、【クロマグロのすり身入りクラムチャウダー】だよ』
マグロ。
マグロ……。
マグロ、マグロ、マグロ……。
魚、か。
せめて最後くらいは、肉料理であってほしかった。
こんなことなら、ギブアップしておけば……と後悔しても遅い。
重いため息をついていると、園田さんが最後の料理を運んできた。
その姿を見た時、口から心臓が飛び出しそうになった。
彼女がしていたのは……眼帯だった。
最後の料理は、魚料理だったはずだ。
それなのに、どうして?
疑問と期待で、胸がふくらんでいく。
彼女がスープの入ったカップを僕の前に置くと同時に、教授の声がした。
『言い忘れていたが、クロマグロのすり身といっても、今回は特別でね』
聞く前から、僕の胸は高鳴っている。
クラムチャウダーに入っているすり身には、マグロの目玉も一緒にすり潰されている、と教授が続けた。
クラムチャウダー特有の、いい香りが漂っている。
彼女の眼帯よりも、僕は目の前のスープから目が離せなかった。
最初のコメントを投稿しよう!