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「あ、とても……美味しいです。料理も全部……美味しかったです!」
「ありがとう。それじゃ、今日の試食会は大成功、だね」
教授の顔に、優しい笑みが浮かんだ。
「料理について、何か意見があると嬉しいんだが」
「ど、どれも美味しくて、特に肉料理と……最後の……スープが」
気の利いた感想が出てこない。
今まで味わったことのない感動で、僕の胸と胃袋は満たされていた。
つたない僕の感想でも教授は嬉しかったのか、さらに目を細めてくれた。
「料理に使った肉はね、どれも餌にハーブを混ぜて飼育されたものでね」
家畜は食べてきたもので、肉質と風味が変わる。
餌にハーブを混ぜると、肉の臭みが減り、やさしい甘みが加わるらしく、料理自体にもハーブをふんだんに使っていたようだ。
「そう、なんですね」
説明を聞きながら、まだ姿を現さない彼女を僕は心配していた。
試食会も終わり、着替えているのかもしれない。
それにしては……遅すぎる。
「あの、園田さん……は?」
「あぁ、彼女なら気分がすぐれないようでね、客室で休んでもらっているよ」
「そう、ですか」
体調が戻り次第、教授が園田さんを家に送っていくらしい。
あれだけ失ったんだ。
よく考えてみたら、平気でいられるはずがない。
「まだ明日の本番も残っているからね。園田君には、しっかり休んでもらわないと」
明日の……本番?
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