牢獄

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 二週間後。  いつもと変わらない滝城家の朝。  義父はステーキ、義母は和食。  僕と美波は軽い洋食と、相変わらずバラバラのメニューだ。  それぞれ空いた食器が片付けられて、食後の飲み物が運ばれてくる。 「お母さん。私ね、今日の夜は真君と二人で食事してくるから、帰りは少し遅くなると思う」  美波が言った。 「あら、デート? いいわね。楽しんでらっしゃい」  義母がにこやかにお茶を飲もうとした時、今度は義父が口を開いた。 「あぁ、そうだ。今日は取引先との会合で遅くなるかもしれない。先に寝てるといい」 「あら、それじゃ夕食は私だけなのね」  義母が寂しそうな顔をした。 「すみません、お義母さん」 「ううん、いいのよ。あなたも、あまり飲み過ぎないでね」  義母が隣に顔を向けると、義父は「あぁ」と目も合わせずに返した。  それに義母は小さなため息をついて、お茶を口に運んだ。  今日は、秘密のがある日だ。  何も知らない義母には、こうして嘘を付くしかない。    これまで会合に参加してきたのは、ほとんどが義父と美波の二人だけか、僕と美波の二人だけだった。  今日の会合には、僕と美波のほかに義父も来る。  義母を除く、家族三人での参加だ。  その場所は……。
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