牢獄

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 夜。 「こんばんは、教授」 「いらっしゃい。美波君、よく来てくれたね」  美波が教授に挨拶したあと、後ろで隠れるようにしていた僕は、教授と目が合ってしまった。 「……こんばんは。お久しぶりです」  とりあえず挨拶を済ませた僕は、すぐに目を逸らした。 「本当に久しぶりだね。滝城さんも、よく来てくれました」  後ろからやって来た義父に気付くと、教授は義父のところに行ってくれた。  今日ばかりは、義父がいてくれて助かった。  会合は定期的に開催されているが、場所と招待客はその都度、変わる。  といっても、場所はオビスがほとんどだ。  それ以外は教授の家だったり、ほかの人の別荘だったりする。  僕が会合に参加するのは、ほとんどオビスだけだった。  オビスが会場となった時、教授はたまにしか来ないからだ。  現に、前回オビスで開催された会合に、教授は来なかった。  今日の会合が教授の家で開かれると知った僕は、参加をためらっていた。  できるなら、教授には会いたくなかった。  美波と義父だけで参加してほしい。  仕事のせいにして、そう言おうとした時、何を思ったのか義父が余計なことを言ってきた。 『たまには家族で参加しよう』  義父に言われたら、断れるはずもない。 「飯野君」  後ろから声がした。  振り返ると、そこにいたのは教授だった。
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