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「それでは、乾杯」
「乾杯!」
「乾杯」
全員が手にしたグラスを掲げると、僕もそれにならった。
みんなは一気に飲み干したが、僕は口を付けたフリをして一滴も飲まなかった。
飲めるわけがない。
普通のシャンパンは飲めても、ノンアルコールのシャンパンは今も身体が受け付けなかった。
今日の料理に使われた肉は、牧場から仕入れたものらしい。
キメの細かいサシと、やわらかな肉質、脂身もほんのりと甘く、しつこくない。
Aランクの肉だ。
教授の手料理は久しぶりだが、相変わらず美味しかった。
どれも手が込んでいて、盛り付けの見せ方もオビスと同等か、それ以上だ。
食事が終わると、それぞれ席を立って話したい人と話す、談話の時間がやって来た。
全員、グラスを手に隣の部屋へ移っていく。
僕もみんなのあとをついていった。
昔は教授の家に何度も来ていたが、この部屋に入ったのは今日が初めてだった。
さっき食事をした部屋も十分に広かったが、その三倍はあるほど、広い応接間だ。
壁のあちこちには、いくつものソファーと丸い小さなテーブルがある。
部屋の中央は何もなく、ちょっとした舞踏会でもできそうな部屋だった。
教授が古そうな蓄音機に針を落とすと、ジャズっぽい曲が静かに流れてきた。
招待客は、それぞれソファーに腰を下ろして談笑を初めている。
僕は、部屋を見渡した。
着古した革ジャンに、薄茶色のサングラス。
昔から何も変わっていない。
蛇塚功監督だ。
僕は、監督の元へ歩み寄った。
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