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料理が完成した。
僕と教授で作り上げた、最高傑作だといってもいい。
それが今、目の前のテーブルにずらりと並んでいる。
僕の胸は、高鳴っていた。
ただの肉片となった美波を口にしたら、ひとまず僕のプランはフィナーレを迎える。
牢獄のような日々を我慢してこられたのも、このプランがあったおかげだ。
「真君は、車だったね」
「はい。水でお願いします」
教授は僕のグラスに、ミネラルウォーターを注いでくれた。
今まで何度か口にしてきた、ジュエリーウォーター。
この日、グラスに注がれたのは、あれ以上に値が張るものだった。
「それじゃ、何に乾杯しようか?」
シャンパンの入ったグラスを手に、教授が訊いてきた。
美波を食らうことで、長かった呪縛からようやく解き放たれる。
僕にとって、この晩餐は格別なものだ。
答えは、一つ。
「至高の晩餐に、でしょうね」
「そうだね。では、至高の晩餐に乾杯」
「乾杯」
いよいよ、至高の晩餐が始まる。
まず先に、僕は目の前のステーキにナイフを入れようとした。
「あの子、美波君は……」
教授が言い掛けて、僕はナイフを持つ手を止めた。
「あぁ見えて、不器用なところがあってね」
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