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土曜日。
大学の外でも、園田さんに会える。
それだけを楽しみに、僕は教授の家に向かった。
駅から閑静な住宅街を越えると、次第に寂しい風景になってくる。
街灯もない薄暗い林を通り抜けた頃には、夕焼けが闇に溶け始めていた。
ようやくたどり着いた教授の家は、ツタを這わせた古めかしい立派な洋館だった。
大きな門の向こうに、一台の黒いスポーツカーがある。
前に、教授が乗り込むところを見たから、教授の車で間違いない。
インターホンを鳴らして、ゆっくりと左右に開いた門をくぐり抜ける。
広い敷地には、よく手入れされた庭が広がっていて、温室もあった。
奥のほう見えたのは、焼却炉……だろうか?
「来てくれてありがとう」
教授の代わりに、園田さんが出迎えてくれた。
丈の短い黒のドレスに、白いエプロン。
メイド服の大きく開いた胸元に、ふくよかな谷間が見える。
ツインテールの髪と、白いカチューシャ。
大学での彼女とは、ガラリと雰囲気が違う。
短いスカートから、細く長い足が伸びている。
ゴクリと喉を鳴らしながら、案内する彼女のあとをついていくと、メモと同じ香りがふんわりと漂ってきた。
案内されたのは、立派な暖炉と大きなテーブルがある広い部屋。
最低でも十人は座れそうなテーブルには、純白のテーブルクロスが敷かれ、その中央に色とりどりの花を生けた花瓶が置かれている。
「ここに座って」
彼女が椅子を引いてくれた。
ほかには、まだ誰も来ていないようだ。
「園田さん、今日の試食会って……ほかの人達は?」
「飯野君だけだから、ゆっくりくつろいでね」
招待されていたのは、僕だけだった。
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