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園田さんが最初の料理を運んできた。
人参やカボチャなどスティック状にカットされた野菜と、一口大のブロッコリーが円形に並べられている。
野菜に囲まれた中央には、湯気を立てたドレッシングらしきものが入った小さな陶器が置かれていた。
「こちらは【旬野菜のバーニャカウダー】でございます」
バ、バーニャ……?
聞き慣れない言葉に、彼女を見上げる。
「お好きな野菜を熱いディップソースに付けて、お召し上がりください」
「は、はい。いただきます」
「あ、ちょっと待って」
彼女は皿の上にあったナプキンを広げて、二つ折りにしてから僕の膝の上に乗せてくれた。
「口の周りが汚れた時に、コレを使ってね」
「あ、ありがとう」
ソースの香りに混じって、彼女とその香りを間近で感じられた。
「い、いただきます」
とりあえず、人参をソースに付けて頬張ってみる。
濃厚でまろやかな中にほどよい塩辛さがあり、人参の甘味とうまく調和していた。
初めての味だけれど、クセになりそうだ。
ソースが美味しいのか、素材がいいのか、その両方か。
気の利いた感想が出てこない。
僕は次々と頬張りながら彼女を見上げ、何度も首を縦に振って美味しいと合図した。
「野菜は全部食べなくても大丈夫だよ。教授はソースの味見をしてほしいみたい」
それを聞いて安心した。
少しして、次の料理が運ばれてきた。
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