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貼られた絆創膏は、これで三つ目だ。
すねと、肩と……胸。
園田さんの顔色は、少し血の気が失せているように見えた。
息を吸い込むと、ハーブの香りと焼けた肉の香ばしい匂いが、鼻の奥をくすぐってくる。
ナイフで切った一口大の肉を頬張り、ゆっくりと一噛みする。
外はこんがりと焼けていて、中からジュワッと肉汁があふれてきた。
心置きなく味わうように、何度も何度もゆっくりと噛みしめていく。
最後の一切れは、飲み込むのさえ惜しくなっていた。
そして、次の料理は……。
『【もも肉の一口ステーキ おろしソース添え】』
もはや、教授の説明はいらない。
目の前に置かれたのが肉料理なら、もう何も言うことはなかった。
肉料理が運ばれてくるたびに、園田さんの絆創膏が増えていく。
今度は、すねをヤケドした時よりも、ひどく足を引きずっていた。
この時、僕は彼女の心配よりも、早く料理を味わいたいという思いでいっぱいだった。
一口大にカットされた、数個の肉の塊。
その一つにフォークを刺すと、肉汁がもれてきた。
添えられた、おろしソースも付けずに頬張る。
余計な味付けは、必要ない。
口の中であふれ出た肉汁から、まろやかな甘味が広がっていく。
肉の塊も、とうとう最後の一つになってしまった。
それを飲み込んだ時、口の中に残る甘い余韻に僕は酔いしれていた。
『料理としては次で最後だけれど、君の胃袋はまだ大丈夫かな?』
……そうか。
十二品という数には、食後のデザートと飲み物が含まれている。
今になって、それを思い出した。
彼女を味わえるのも次の料理で……最後だ。
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