罪はポケットの中

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 ブラックサンタの殺人事件。ネットでそう呼ばれた事件があった。  十二月に入り連続で起きた殺人事件。最初に事件が確認されてからわずか二週間で八人殺された。犯人の手がかりどころか目撃者も見つかっていなかった。被害者の共通点は若い男であること。住んでいるところも職業もバラバラ。二十代前半というだけだ。  殺され方は頭を鈍器のようなもので複数回殴られたことによる殴殺。そして奇妙な点が一つ、これが異様なあだ名のつけられ方をしてしまった理由なのだが。  被害者のポケットには必ず小さなプレゼントが入っているのだ。ポケットに入るサイズなのだが、不思議なことに中身は空だ。綺麗にラッピングされた空箱が入れられている。毎年ニュースになるのでもはやクリスマス前の風物詩のようになっていた。  プレゼントには何の意味があるのか、中身は本来何を入れようとしているのか。憶測が盛り上がり、恐ろしい事件というより暇つぶしのネタとなりつつあった。  だがクリスマスを境に事件はピタリと止まる。世間が騒ぐので雲隠れしたのではないか、と言われている。  本当は逮捕されたのだ。逮捕されたのは十二歳の少女だった。警察は逮捕したこと自体を公表していない。 「殺人犯とお話ししなきゃいけないなんてかわいそうですね。私が未成年だからカウンセリングとか、正常な判断ができたかとか。いろいろ難しいんでしょうけど」 「そんなことないよ。どうぞ、君の話を聞こう。話してごらん」  立会人のもと犯人である少女には面会が行われている。彼女は弁護士やカウンセラーの類は全て断っていた。自分には責任能力がある、確かに殺意があった。殺すつもりだった、全て認めているのにどうして無罪にしようと頑張るのか理解できないと言っている。 「本人が罪を認めているのに、一生懸命私の罪を減らそうと頑張るんですからね。世の中ってよくわからないです」 「そうだね」 「いろんな人と面接してきたからいつも同じことを話さなきゃいけなくて。結構面倒くさいんですけど、あなたも仕事でしょうからお話ししましょう」  私はいわゆる可哀想な子供ってやつだったんだと思います。母親と二人だったんですけど、この母親が母親らしくない母親で。暴力は振るうしご飯は作らない、家に男を呼び込んではいかがしいことをしていたので。あの時は私は小学生だったから何やってるのかよくわかんなかったんですけど。  母親がそういう性的なことをやってるのを目の当たりにするとね、男が大嫌いになるんです。ああ、別に私が何かされたわけじゃないですよ?
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