2人が本棚に入れています
本棚に追加
察しの悪い俺でも分かる。
立花美砂が鈴木一輝が好きなことを…。
一輝とは小学校からの幼なじみで高校もクラスも一緒だ。
長身で爽やかな笑顔と柔和さが誰からも好かれる好青年。
一方の俺は体格には恵まれたが目つきが悪いうえに、笑顔も少なく周りは誰も近寄りたがらない。
「旭の笑った顔って可愛いのにねえ。みんな知らないだけだよ」と一輝によく言われる。
一輝は優しい。女の子には特に優しい。
本人は無自覚で優しくしているから女の子を勘違いさせて、知らない間に相手を傷つけている。
顔を含めて悪い男だ。
俺が思うに立花もその一人だ。
少し茶色がかったセミロングの髪が白い肌を際立たせて大人しめの印象を受ける。
クラス替えから二ヶ月経ち、期末テストが近づき教室全体に勉強ムードが漂う。
頭のいい一輝の席の周りは勉強を教えてもらおうと人が群がっている。
遠くの席から、それをぼんやり眺めていると視界の端に立花が映る。
どうやらあの群れに入りそびれたらしく、少し離れた所からもじもじと群れの中に入るタイミングを伺っているようだ。
どうするのだろうか?しばらく観察したが一向に入れる気配がない。
「あっ、立花さんもこっち来る?」
一輝がふっと顔を上げたさきに立花が見えて、にっこりと微笑みかけ手招きをされている。
立花は顔を赤くしながら頷き、一輝が空けた隣のスペースへと歩き群れと一体化した。
うーん、あれは確実に一輝のことが好きだな。
最初のコメントを投稿しよう!