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 向かい合い、相手の目を見つめる。  茶色がかっているのか、(けぶ)るような薄墨色なのか、月も星も出ていない夜闇のように真っ黒なのか。虹彩の微妙な差異まではっきりと見分けられるくらいに、じっと見つめる。  書架はその奥にある。    見上げるほどに背が高く、精一杯爪先立ちして腕を伸ばしても、一番上の段には届かない。  けれどの私は重力から解放された存在だから、望めばふわりと浮き上がって、自由にどこへでも、指先を辿り着かせることが出来る。  書架は壁一面を覆い、奥へ奥へと続く。図書室の奥行きは深く、どんなに目を凝らしても果てが見えない。  棚には様々な厚みの本が並んでいる。絵本のような薄いものもあれば、辞典のような重厚なものもある。  その人が生まれてから今日まで見た夢と同じだけの数の本が、そこにある。    夢はそこに記されている。  本を開けば、そこに文字が並ぶ。夢を詳細に書き写した文字だ。  けれどそれを読むより早く、映像と音声が現実と見紛(みまが)うくらいに精緻に再現され、頭の中に流れ込んでくる。  そうして私は、誰かが見た夢を知ることが出来る。  それが、誰にも話したことのない私の秘密。
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