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「タイミングが悪いよな」
「電車、まだ来ないね」
〟パッパッパッパッ〟と、並んでいるハルとサキの顔を、警告灯が赤く照らした。
――これって……、二人とも、もう全然、引きずってないってことだよな。
ハルとサキの自然な会話に、ぼくはホッとした。
線路の右奥に、南朱鷺丘駅が見える。
ホームから電車が動き出し、ぼくたちが立つ踏切の方にゆっくりと進んできた。
電車は徐々に速度を上げていく。
一両目、二両目と通り過ぎる車両の窓から、吊り革に捕まる乗客の顔が見える。
「あっ!」『ニニギノケガレ!』『イワナガ姉さま!』
三両目の電車のドア窓に、黒紫の光。
ダイチにとり憑いたニニギノケガレとイワナガヒメさまが、通り過ぎるドア窓越しに見えた。
ニニギノケガレとイワナガヒメさまは見つめ合っていたので、窓の外のぼくたちには気付かなかったようだ。
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