第3話 追跡

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第3話 追跡

ハルが、身を乗り出して聞いてきた。 「それで、どうして一番上のお姉さんが、そのニニギノケガレってやつに誘拐されたの? もしかして、イワナガヒメさまって、サクヤヒメさまより美人だから狙われたの?」 「ちがうわ!」 そう言ったのは、女神さまたちではなくチリだった。 「イワナガヒメさまは、不死の命を与える力を持っているからよ」 チリの言葉に、チルヒメさまが大きくうなづいた。 「そのとおりです。ニニギノケガレは、神から人となったニニギノミコト(瓊瓊杵尊)が死して、黄泉の国に残した神魂の(けが)れで、亡者の妄念を糧とする鬼どもの頭領です」 「本来、黄泉の国の外には出られないのですが、ニニギノケガレは、五千年の時を掛けて亡者の妄念を集め、蓄えた力を使い、黄泉の国から現世に()い出してきたようです。 でもまだ、命を得たわけではない。 ニニギノケガレはイワナガ姉さまの力によって、不死を手に入れようとしているようです」 「サクヤ姉さま、この人間たちは信じられます。 この者たちに力を借りて、イワナガ姉さまを探しましょう!」 チルヒメさまが、サクヤヒメさまに言った。 ――チルヒメさま、気が弱そうと思っていたのに……。 どこか、チリに似ている。 「そうだな。お前たち、助けてくれるか?」 「えっー、今からデートなんですけれど」 そう叫んだハルの背中を、サキがバシンと叩いた。 「お手伝いします!」
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